多様な歴史的街並みが生きている関西地域において、歴史的景観を保全、復元、活用することを社会の要請と捉え、歴史的景観の保全と復元のために、各種の空間データを効果的に活用した分析・表現手法の開発を行うことを目的とする。GISとCAD/CGの両技術に加えて、RS(リモートセンシング)やGPS(汎地球測位システム)の技術を統合したシステムを構築し、またDMデータや航空機レーザ測量データ、さらには衛星画像といった多種多様な空間データを融合させることで各データのポテンシャルを引き出し、さまざまな観点から歴史的景観を分析・表現することにしている。 今年度は、枚方宿地区についてMMS(Mobile Mapping System)を用いて計測された点群データをもとに地物モデルを精緻化して表現する手法の開発に取り組んだ。さらに、研究対象地域に奈良県・橿原市を加えて、古代・藤原京と現代・橿原市の3次元都市モデルを構築、大和三山や大和青垣に代表されるわが国の伝統的空間構造の典型とされている山容景観について、その変遷と対比を行っている。具体的には、橿原市総務部財政課情報システム室よりDM(Digital Map)データと地形データの提供を受けて、図面や史料といった従来の資料に加えて各種の数値地図を活用して、山々の見え方と見方に関する分析・検証を行っている。見え方に関する工学的側面のみならず、古代より人々はどのように見てきたかという見方という歴史的側面からも典型的な山容景観にアプローチしている。
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