研究概要 |
動脈硬化症の危険性を高める要素の一つにメタボリック症候群があり、肥満に認められる肥大化した脂肪細胞から分泌されるアディポサイトカインの作用による血管や脂肪組織の慢性炎症が重要な役割を果たしている。最近、慢性炎症下で好中球がオゾン様活性酸素を発生し、生体内のコレステロールと反応してオゾンに特異的な酸化物を生成すること、また、オゾン特異的コレステロール酸化物が粥状動脈硬化病変組織やアルツハイマー病変組織に存在していることが報告された。そこで、本研究では、コレステロールのオソン特異的酸化物の合成、化学的構造解析、高感度検出法の開発、活性化した好中球による生成、生物活性などについて検討を行った。オゾン発生器を用いてコレステロールを酸化することにより、2つの主要な生成物、3β-hydroxy-5-oxo-5,6-secocholesterol-6-al(secosterol)と3β-hydroxy-5β-hydroxy-B-norcholestane-6β-carboxaldehydeを合成した。これらオゾン酸化コレステロール類をdansylhydrazine誘導体とし、HPLC-蛍光検出器で高感度分析する方法を開発した。この方法を用いて、フォルボールエステルにより活性化した好中球様細胞が、活性化していない細胞に比べて、オゾン酸化コレステロール類をより多量に生成することを明らかにした。また、secosterolの生物活性を調べたところ、他の酸化コレステロールよりも低濃度(2-3μM)で、数種の細胞に対して毒性を示しアポトーシスを誘導した。この細胞死には、secosterolの細胞内への取り込みとそれに伴う細胞内での活性酸素種の生成が重要であることが明らかになった。現在、好中球によるコレステロールのオゾン酸化および細胞死誘導の分子機構についてさらに詳細に検討している。
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