本年度は、東京湾においてミズクラゲポリプの天然海域における調査、環境調査、成体クラゲの現存量調査、ポリプの呼吸速度測定等を実施した。 現場海域におけるミズクラゲポリプの調査及び環境測定は、東京湾奥部において従来より実施している観測点(船の科学館内の岸壁及びその周辺)等で月1回の頻度で行った。環境測定の項目は、CTD(水温、塩分)、現場式DO測定装置、水中光量子計や採水によるクロロフィル濃度及び小型動物プランクトン現存量等である。底層近くの貧酸素水塊が発達する場所でのみ、ミズクラゲポリプの存在が認められた。 東京湾奥部における貧酸素水塊の挙動等を把握するために、広い範囲において環境測定を実施した。環境測定は、東京海洋大学練習船"ひよどり"を用いて、東京湾奥部の海域で月1〜2回の頻度で行った。特に、ミズクラゲ大量発生海域として知られ、かつ貧酸素水塊の頻発する北部・北東部沿岸域において多くの調査地点を設け、詳細な調査を行った。環境測定の項目は、ポリプ調査地点と同様である。 現場海域における成体クラゲ類の現存量は、東京湾奥部における環境調査と同時に東京海洋大学練習船"ひよどり"を用いて、東京湾奥部の海域で月1〜2回の頻度で主に目視によって行った。クラゲ類の採集は、特別に作成したクラゲ用大型ネット、またはたも網によって行い、傘径と性別を直ちに測定し、観測ごとの傘径頻度分布を求めた。動物プランクトンの分布調査は、プランクトンネットの鉛直曵またはニスキン採水器による定量採集によって、クラゲ類の採集と同地点で行った。採集したサンプルは直ちに、ホルマリンで固定し、種類組成の同定等に供した。 雌成体クラゲに付着していたプラヌラ幼生の一部を実験室に持ち帰り、ポリプに付着・変態させた後、呼吸速度の測定に供した。呼吸速度は、ウィンクラー法によって測定した飼育海水内の溶存酸素濃度の差から求めた。
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