1.土壌有機炭素の構造と生成後年数との関係 土壌有機物の化学構造と安定性(滞留時間)との関係を明らかにすることを目的として、愛知県豊田市稲武および宮崎県宮崎市の褐色森林土A2またはA3層から調製したフミン酸を、アセトン-0.01MNaOH系による沈殿法を用いて細分画し、各画分の^<14>C年代と黒色度、^<13>CNMRによる炭素官能基組成、ルテニウム四酸化物酸化分解生成物の分析に基づく縮合環組成、およびδ^<13>Cとの関係を解析した。フミン酸画分の黒色度と^<14>C年代の間には有意な正の相関が認められ、また、生成後年数の長くなるにつれ、芳香族炭素含量、縮合環の含量および縮合度が大きくなることを明らかにした。稲武と宮崎との間には腐植化進行速度に大きな違いが認められたが、これまでの結果との比較から、気温の違いは腐植化の進行速度には影響しないと推察された。また、酸加水分解前後の^<14>C年代の差より、フミン酸の生成初期に構造中に取り込まれた糖およびペプチドが長期間残存していることが示された。 2.温度変化が土壌有機炭素の滞留時間に及ぼす影響評価 温暖化の進行が構造特性、生成後年数の異なる有機炭素の滞留時間に及ぼす影響を明らかにすることを目的として土壌を15〜40℃、7段階の温度で恒温培養し、フミン酸の分解速度の変化と黒色度との関係を調べた。土壌全炭素の減少速度は30℃以上でそれ以下の温度よりも大きかったが、フミン酸の量および組成には温度の違いによる差は認められず、黒色度が小さい画分に対しても、1年以内に温度上昇がフミン酸の分解速度に影響を及ぼすことはないと推定された。
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