研究概要 |
イソスジエビ(Palaemon pacificus)を用いて、今世紀末に予想される大気中CO_2の最高濃度である1000ppmvのCO_2を含む空気に平衡させた海水で30週間飼育した(海水pH:対照区8.15±0.04,CO_2区7.89±0.06)。CO_2区の個体は曝露開始後18週目から斃死が起こり始め、30週間後の生残率は対照区90%(20個体中2個体死亡、中1個体はハンドリングミスによる)、CO_2区が55%で両区の生残曲線には有意差があった(p<0.05 log-rank test)。成長・日間摂餌量は両区間で有意差は認められなかった。雌雄こみで求めた体長には両区間で有意差はなかったが、雌のみについて求めた体長はCO_2区の値が曝露の延長につれて対照区の値より低くなる傾向が認められた。雄についてはそのような傾向は認められなかった。平均脱皮間隔は、曝露18週目以降CO_2区の値が対照区と比較して有意に大きくなった(t-test, p<0.05)。酸素消費量については両区で有意差は認められなかった。実験終了時に測定した触覚長はCO_2で極端に短く、その体長に占める比はCO_2で54±22%であったのに対し、対照区では165±14%であった(t-test, p<0.001)。また対照区では全ての雌個体(N=6)が複数回抱卵したのに対し、CO_2区では5個体の雌中1個体が1回抱卵したのみであった。これらの結果は将来起こりえるCO_2濃度増加が引き起こす海洋酸性化がエビ類に対して深刻な影響を及ぼす可能性があることを示唆している。
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