平成18年度の研究で、1000ppmvのCO_2濃度をもつ空気に平衡させた海水で30週間飼育したイソスジエビ(Palaemon pacificus)の生残率が、現在の空気(CO_2濃度380ppmv)で飼育した個体と比較して、有意に低下する事が明らかになった。今年度は雌雄判別が可能な体長20mm程度の個体を用いて、CO_2長期曝露が抱卵率に与える影響についてさらに検討した。しかし、1500ppm実験では対照区の飼育に実験途中で問題がおき、28週目での生残率が最低で57%にまで低下したため、CO_2の影響について明確な影響を認めることができなかった。同時に行ったイソスジエビの初期発生に及ぼすCO_2影響実験では、1900ppm環境中で孵化した幼生の孵化率が低下する傾向が見られ、着底時の稚エビの体長が有意に小さくなる結果が得られた。過去2ヵ年の結果は、CO_2濃度の増加による海洋酸性化がエビ類の成長や再生産、初期発生に深刻な影響を与える可能性を示している。今後はさらに知見を蓄積し、食物連鎖を通した生態系影響について検討する必要がある。
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