観測の実施: 平成19年4月に中国泰山山頂において自由対流圏大気エアロゾル粒子を採集した。 平成19年12月及び平成20年3月に中国北京市での係留気球観測に参加し北京市地表付近混合層上層の大気エアロゾル粒子を採集した。 サンプルの分析:電子顕微鏡を利用する個々のエアロゾル粒子の分析方法を用いて、観測活動で得られたサンプルの分析を行った。特に水透析を利用して、黄砂粒子中の非水溶性成分と水溶性成分の含む状況及び海塩との結合による黄砂粒子の乾性沈着過程の変化や黄砂粒子中の鉱物成分の水溶性特徴について検討を行った。また、黄砂時期に熊本市都市大気中浮遊粒子状物質表面の多環芳香炭化水素(PAHs)についても分析を行い、浮遊粒子とPAHsの関係も調べた。一部分のサンプルと得られたデータは現在分析と解析中である。 研究成果:(1)海洋大気中において黄砂粒子の乾性沈着フラックスが黄砂粒子と海塩粒子の混合状況に大きく左右されていることが確かめされ、定量的な見積もりが得られた。(2)日本に飛来した黄砂粒子に含まれた水溶性成分中に鉄の化合物質があることが個々の粒子から見出された。(3)中国泰山(標高1520m)で採集されたサンプル中に、時には人為的な汚染物質が著しく多く、時には非常に少ないことが確認された。人為的な汚染物質は主にススで、中には鉱物粒子もよく見だされた。自然からの黄砂粒子と違い、これらの鉱物粒子が人為的な汚染物質を携帯していることが多かった。(4)都市大気中においてPAHsは主に地元の交通機関などから排出されたもので、黄砂の飛来に伴って輸送されたPAHsを確認されてなかった。これらの成果を元にして取りまとめた論文3編を投稿して発表・受理された。他の研究との共同研究で6編の論文が発表された。その他、国内外の学会で5回発表を行った。
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