駿河湾奥部清水港内にて、2005年1月より2007年3月まで毎月1〜2回、合計40回の船舶観測を実施し、水温・塩分、流向・流速、栄養塩観測とともに採水し、植物プランクトンを電子顕微鏡により種識別し、高速液体クロマトグラフ(HPLC)による色素分析より種組成分布を観測した。色素分析は2006年2月までの試料の分析が終了した。この結果、港奥部折戸湾において、7月にFucoxanthinを指標とする珪藻類が増殖し、その1ヵ月後にDivinyl Chlorophyll a(DivChla)の急増が観測され、これを指標とする原始緑藻Prochlorococcusが電子顕微鏡観察でも確認された。Chlorophyll a濃度に対するDivChla濃度は場所によって0.5〜2程度まで大きく変動し、港内の生産に大きく寄与していることを確認した。一方、同様にピコ植物プランクトンに分類される藍藻Synechocuccusについてはその指標色素でZeaxanthin濃度は全体に低いものの、7月に折戸湾内部に増加していることが認められた。高速液体クロマトグラフによる色素分析においては、標準色素による検量線作成に時間を要していたが、ピーク位置が重複しない13種類の色素を同時混合する方法で効率的に複数色素の検量線を作成する方法を確立し利用した。沿岸域と対比するため、駿河湾内および東海沖にて水深1000mまでの採水を行い、正PLCによる植物プランクトン色素分析を行った。この結果、Fucoxanthinは水深1000mでも観測されたのに対し、Zeaxanthinは水深50m以深ではほとんど観測されず、これはピコ植物プランクトンがほとんど沈降しないことを示していると考えられる。
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