昨年度より引き続き、駿河湾奥部清水港内にて、毎月1〜2回の船舶観測を実施し、植物プランクトンを電子顕微鏡観察するとともに、光合成色素を高速液体クロマトグラフ(HPLC)により分析した。種組成を定量評価する手法として、文献値による種毎の色素組成比とHPLC分析結果より多変量解析する従来法を改良して、種毎の色素組成比を最適化して種組成量と色素組成変化を同時に評価する方法を考案し、その評価を進めた。 また、浜名湖からの海水が入り込む佐鳴湖において、表層水中の色素組成の季節変化を観測し、夏季に微細藍藻Synechocuccusが急増することを観察した。同時に底泥中の色素組成の鉛直分布を調べ、周期的に藍藻の指標となるZeaxanthinが増大していることを確認した。これは夏季の水温が25℃を超え、藍藻の増殖を加速したためと考えられる。原始緑藻と藍藻Synechocuccusについてはハワイ沖定点HOTでも1996年より観測が継続されており、この結果の解析も行った。この結果、Zeaxanthinの積分量は10年間で徐々に増加しており、一方、原始緑藻の指標であるDivinyl Chlorophyll a は積分量では有意な変化は無いものの、1細胞当りの含有量が増加しており、細胞の大きさが増大している傾向が示唆された。この後、これらの結果を考慮して、沿岸域でのピコ植物プランクトンの増殖の特徴を評価する。
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