研究概要 |
南半球の春先に発生するオゾンホールの影響のために,南極ではB領域の紫外線が地表に到達するなどの影響が現れている。南極に近いオーストラリア大陸では,皮膚癌患者増加の傾向が報告されている。南極における紫外線量の増加が生態系に及ぼす影響は大きいと推察される。動物組織を用いた影響評価の研究として,紫外線が目の水晶体や角膜に、どのような分子機構で白内障を引き起こすか調べた。また,平成19年12月〜平成20年2月にかけて,山本と高橋が,第49次南極地域観測隊隊員として昭和基地に滞在して,環境科学棟において,ヒト皮膚繊維芽細胞とヒト皮膚角化細胞への紫外線照射実験(夏季と秋季)を実施した。実験終了後の,培地や細胞は,砕氷艦しらせにより日本に持ち帰って分析する予定である。 平成17年に昭和基地に運搬した牛眼および豚眼の試料は,春季,夏季,秋季に分けて各々30日間太陽光に晒す実験を行った。平成19年4月頃に日本に試料が運搬される見込みである。試料の分子構造を分光学的に観測し,20年度中に報告する予定である。さらに平成18年12月に昭和基地に運んだ試料は,現在紫外線曝露実験の遂行中で,平成20年4月頃に日本に戻ってくる予定である。 一方,南極に生息するペンギンの眼に対する紫外線の影響を評価する目的で,ラングホブデ袋裏,オングルカルベン島,リーセルラルセンの3ケ所のアデリーペンギンルッカリーを調査して,ペンギンの眼の現地観察調査や写真による調査を行った。さらに,4体のアデリーペンギン死亡個体を回収して日本に持ち帰った。 更に,太陽光スペクトルの強度の季節,時間変動を調査する目的で,卓上分光光度計と太陽光追尾装置を組み合わせた装置を昭和基地の環境科学棟屋上に設置して,現在も観測を継続的に実施している。
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