研究概要 |
南極のオゾンホール発生時に南極に到達する紫外線が,生態系に与える影響評価の一環として,特に生物の眼に与える影響に注目して,眼のタンパク質の高次構造の変化を分光学的に研究した。研究を実施するために,研究代表者と研究分担者は,第49次南極地域観測隊の夏隊員として,平成19年12月19日〜平成20年2月15日の間に,南極昭和基地に滞在して,実験を行なった。 (1)南極のオゾンホール発生時に南極地表に到達する紫外線強度の季節変動を,波長250〜800nmまで,1時間に一度測定記録した。 (2)(1)の結果を踏まえて,南極昭和基地に設置した,紫外線曝露装置を用いて,牛及び豚の眼に紫外線を照射する実験を実行した。 (3)ATR-FT-IR法によって,角膜コラーゲンのアミドIIバンドの強度が,アミドIバンドの強度と比較して大幅に減少することが明らかになった。これは,コラーゲンの特にプロリン残基の結合が紫外線によって壊れている可能性を示唆している。 (4)同じく、近赤外ラマン散乱測定の結果,牛眼水晶体のクリスタリンのトリプトファン残基が,紫外線照射によって選択的に壊れていることが明らかになった。 (5)南極のアデリーペンギンの眼に対する紫外線の影響の有無を観察によって,確認した結果,解剖学的な変化は認められなかった。
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