平成18年度 吉野川におけるTotal-N濃度は、集水域の大部分が森林である上〜中流域は0.19-0.55mg/lで、平野の割合が多くなり、人口や農地が増える下流域においては、概ね0.58-1.19mg/lと濃度が上昇した。Total-Nのδ15N値は最上流で最も低く1.0‰、中流域では3.6〜5.9‰、下流域では値が最も高くなり、4.2〜8.9‰になった。Total-N濃度とTotal-Nのδ15N値の間には良い正の相関(r=0.91、p<0.001)が得られた。NO_3^-N濃度とNO_3^-Nのδ15N値との間にも良い正の相関(r=0.89、p<0.001)が得らている。窒素濃度と窒素δ15N値が集水域の農地や人口が多くなるにつれともに上昇することは、下流ほど農業排水や生活排水による窒素負荷の影響を受けていることを示しているといえる。 平成19年度 琵琶湖に流入する主要10河川においてTotal-N濃度とTotal-Nのδ15N値の関係は、吉野川と同様であった。しかしながら、約8‰を極大値とし、水田地域を流れている窒素濃度の高い河川ではTotal-Nのδ15N値は小さくなった。このような河川では、アンモニア濃度が高かった。河川中の溶存酸素濃度が低く、十分に硝化が行なわれない環境ではTotal-Nのδ15N値は減少することがわかった。このようなδ15N値の変動はδ15Nが人間活動による窒素負荷の影響を反映する良い指標であり、有機物汚濁を視点とした水環境の診断に用いることが出来きることを示している。吉野川の結果からδ15N(‰)=3.7×Total-N濃度(mg/l)-0.30といった関係が得られ、今後河川の健全性を考える上での基準となる。
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