研究概要 |
環境流体シミュレーションの実用計算モデルとして多く用いられているk-ε型乱流モデルを組み込んだレイノルズ平均数値流体モデル(以後,「実用モデル」と呼ぶ)を作成し,これに近年提案された車両走行風のパラメタリゼーションモデルを付加した.車両走行を陽に計算する沿道汚染高解像度シミュレータ(以后,「シミュレータ」と呼ぶ)と同じ条件で実用モデルによる計算を行い,両結果の比較を行った.また,大気汚染のバックグラウンド濃度を調べるため局地気象モデルを用いて関西地域を対象とした大気拡散解析を行った.以下に,実用モデルについて得られた主な知見を述べる. 車両走行方向に垂直な断面内の流れについては,車両通過域の上空から道路面への下降流や地表面付近における路面中央から路側への水平流といったシミュレータで見られる流れ場の特徴は再現される.一方,主流方向の平均流速はシミュレータの結果に比べ過大評価・主流に垂直方向の平均流速は過小評価される傾向があり,また,既往の野外実験やシミュレータの計算で見られる後曳き渦が生じないといった差異のがあること確認された.汚染質拡散については,濃度分布形状はシミュレータの結果と定性的に一致するが,鉛直拡散幅が過大評価される傾向が認められる.本研究で明らかとなった実用モデルの問題点は,走行車両モデルのパラメータを最適化することで改善が見込まれるものの他,k-ε型乱流モデル自体の特性の影響および車線上を車体が間欠的に通過する効果を考慮する必要があることを示唆しており,今後モデリングの改良を行う上での指針を与えるものである.
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