(1)野外モニタリング: 霞ケ浦西浦における右岸・中岸・左岸のそれぞれにおいて250m間隔、全484地点について調査を行い、西浦湖岸の地形を異なる地理スケール(0.25、2、4、6および8km)を用いて、(1)湾、(2)前浜および(3)岬に分類し、各地形とそれらに対応する植生帯の面積との関係を調べた。 全植生面積はいずれの地理スケールにおいても湾で最も大きく、また岬で最も小さく、前浜は湾と岬の中間に位置付けられた。種数については変化がなかった。浮葉・沈水植物帯の面積は、地理スケールが4kmまでは湾で最も大きかったが、地理スケールが6km以上になると岬にも出現しスケールが大きくなるにつれ面積も増大した。このことは地理スケール増加に伴い、岬の裾が浮葉・沈水植物の成育場所として機能したこと、すなわち岬が波浪から保護するシェルター機能を発揮しはじめたことを推測させた。一方、抽水植物帯の面積は、地理スケールに関わらず、岬、前浜、湾、の順で大きくなる傾向は不変で、.有機質土壌や腐葉層の出現傾向と一致した。抽水植物のほとんどを占める陸ヨシはどの地理スケールであっても岬には不適であり、すなわち波浪等の攪乱に対して敏感で耐性も低いことを予測させた。 (2)圃場における野外実験 茨城県つくば市の国立環境研究所内、ヨシ植栽後10年以上経過した4m×4m×1.8m(縦×横×高さ)有底枠実験池を2枠(A区、B区)と無植栽の2枠(C区、D区)を用いた。水位は地表面を0cmとして、A区とC区を-20cm、B区とD区を+20cmとし、A区を陸ヨシ、B区を水ヨシに相当させた。水位が成長に及ぼす影響を評価するためA区とB区から地上30cmの位置で各10本刈り取った。草高、稈の直径、葉数、節数を計測後、80℃で48時間乾燥させ放冷後重量を測定した。その結果、陸ヨシ区で、草高、直径は1.2倍、乾燥重量は1.6倍、地上部現存量は1.5倍大きくなった。陸ヨシは長くて太く成長し、水ヨシは短くて細く成長することを明らかにした。
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