研究概要 |
初年度の平成18年度は渡島半島地域全体と、なかでもヒグマ出没に関して対照的な地域、すなわちヒグマ出没が頻発する厚沢部町と比較的少ない長万部町を特に選び、郵送アンケートによる住民意識調査を行い、また厚沢部町において関係者への聞き取り調査やヒグマ出没・被害発生現場の検証を行った。その中間報告を第17回国際クマ学会で発表した。それに加えて世界における野生生物に関する人間的側面研究のレビューや北米・北欧でのヒグマの保護管理の実態などをまとめた論文を発表した。平成19年度は上記住民意識調査の結果を集計・分析した論文を発表した。それに加えて聞き取り調査結果などについても分析し、第18回国際クマ学会で発表した。また引き続き地域住民への聞き取り調査を行った。 平成20年度はヒグマに対する社会的許容性が極めて低い厚沢部町において、どのような予防対策が現実的であるかを探るために、ヒグマの出没状況と農家の人々の心情などについての聞き取り調査を再び行った。並行して、道内各市町村の鳥獣被害対策の現状についてアンケート調査を行い、結果を論文として発表した。1月にはフィンランド・ラップランド大学にてKaarina Kailo ed., Wo (men) and Bears, Inanna Publications & Education, Canadaの著者の一人、Elina Helander Renvall博士と共同セミナーを開催し、ラップランドの先住民族サーミの社会と文化におけるクマの位置づけや自然と人間との持続的な関係について北海道のアイヌ民族の場合とかかわらせて議論を交わした。3月には、平成13年度と平成18年度に渡島半島地域を対象として実施した2度のアンケート調査を比較分析し、本学環境科学・防災研究センター主催の国際会議(Joint Seminar on Environmental Sciellce and Disaster Mitigation Research 2009)において発表した。また厚沢部町において地域のヒグマ出没予防を担う積極的な住民を育成するため、生態学研究者を講師とした講演会を実施し、ヒグマの生態や予防法、対処法についての関心喚起と知識普及を図った。
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