平成18年4〜7月にSt Andrews大学にて在外研修をおこなった(費用は大阪市負担)。その成果を元に、帰国後本研究費を用いて社会環境情報開示の論拠として考えられている2つの概念(Social AccountabilityとLegitimacy)のわが国企業への適応可能性について検討をおこなった。その成果については、第19回日本社会関連会計学会全国大会(於:愛知工業大学)統一論題において「持続可能性と会計の課題」として報告をおこなった。 社会環境情報開示の論拠を検討する場合、(1)利用者指向、(2)作成者指向、(3)規制者指向の3つの視点からの分析が有効であるが、わが国の場合、とくに(3)の規制者指向の影響が強い。その場合、強制力を発揮するという方法ではなく、各企業の自発的意志を促進するという方法を用いている点に特徴がある。作成者の戦略的意図が強調される正統性(Legitimacy)は、わが国の場合、必ずしも説明力は強くない。この点については、現在外国での学会に論文を提出しているが、アクセプトされれば報告の予定である。なお、今後も継続してわが国の特徴について海外に情報発信していく予定である。 自治体の水道事業体の環境情報開示(環境会計および環境報告書)の比較研究については、政令指定都市および主要自治体(東京都・大阪府・京都府等)が発行している環境報告書および環境会計を入手し、現在、記載内容の比較をおこなっている。その結果をもとにして、人件費の処理や水道記念館のコスト、漏水対策のコストの処理などの比較検討をおこなうために、平成19年度はアンケート調査を実施する予定である。 ファミリー・フレンドリー企業の情報開示行動については論点が広範に及んでおり、平成18年度は論点の整理にとどまった。平成19年度は専門家の意見を聞くなどしてアプローチの方法を確立したいと考えている。
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