研究概要 |
中国を中心としたアジア諸国の経済発展に伴って、近年、わが国からアジア諸国へ循環資源の輸出が急増し、わが国の循環型社会形成に少なからぬ影響を及ぼしている。そこで、本研究は、アジア輸出が著しい「廃PETボトル」と「使用済家電4品目」「中古パソコン」を取り上げ、その流出の実態と国内事業者等への影響、とりわけ拡大生産者責任制度への影響等を調査し、資源の国内循環と国際循環の望ましい発展のあり方について政策提言を行った。 (1)廃PETボトルについては、市場分析の結果,部分的有価市場を形成しているものの,分別収集過程における地方財政の多額な支出に支えられた輸出主導型の価格体系となっている。このような価格体系のもとで,廃PETボトルを特定事業者の再商品化義務から除外することは,廃PETボトルのアジア輸出を拡大し,国内再生処理業者の衰退をもたらす。2006年の容器包装リサイクル法改正(法10条の2)は,市町村の指定法人への引渡量を増加させる一定の効果が期待できる。しかし,市町村の独自処理を解消するには,特定事業者の再商品化委託単価に,輸出単価と再商品化事業者の落札単価との差額を課すことが効果的である。 (2)使用済み家電製品については、国内外で適切に管理されないかぎり、今後もアジア輸出が拡大し、現地で深刻な環境汚染を引き起こす。本研究ではその対策の一つとして拡大輸出者責任制度(EER)を提案した。使用済み家電製品の輸出の際に廃製品輸出負担金(G)を賦課し、これを輸出先のアジア諸国へ還元する仕組みである。この制度は家電リサイクル制度の法定ルートから外れて流通する使用済み家電製品に対する輸出規制という側面と、輸出した使用済み家電製品に起因する環境汚染を日本並みの水準へ引き下げるという途上国支援の側面をもっている。先進国から途上国へ向けた製品・使用済み製品の輸出に係る貿易原則の一つとして早期に確立される必要がある。
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