研究概要 |
本研究の目的は,森林管理放棄をもたらす要因として管理主体の構成と利用価値に注目し,森林管理放棄にいたったプロセスを明らかにすることである.本年度は,まず,森林管理放棄の要因に関するレビューを行った.レビューは,大学研究紀要にまとめ,掲載された(森野・堀内2007).次に,管理主体のうち,管理放棄の進行状況が著しいと指摘される小規模林家に注目し,これまでの森林利用の履歴,および管理状況と問題点について,意識調査を行った.また,対象地の林相の変化を明らかにするために,空中写真データの収集を行った. 対象地における所有面積10ha未満の小規模林家27名に対し,直接面談方式の意識調査を行った.その結果,現在の所有林は,先祖から相続した山林に加え,昭和40年代に個人分割された村有の採草地または薪炭備林である場合がほとんどであった.所有林への植林は,ほとんどが現在の所有者本人もしくはその父親によって行われていたが,植林後の管理については継続して個人で行ってきた場合と,森林組合などに委託する場合に分かれた.現在の管理状況が良好であるケースは少なく,管理放棄に至っている林家が多くを占めた.管理放棄に至った主な要因は,木材価格の低迷,後継者不足,台風被害,獣害,集落崩壊の危機感などであった.これまで指摘されてきた木材価格の低迷は,搬出代すらまかなえないところまで進んでおり,放棄を現在の最良の選択としている林家が多かった.2004年の甚大な風倒木被害を機に管理のモティベーションを失った林家も多かった.これまで特に注目されていなかったが,獣害が個人有林の管理では大きな支障要因になっていることが明らかになった,林相変化については,1950年代および2000年代のデータを収集し,1950年代の判読が終了した.来年度も引き続き判読を行い,林相・樹冠密度・立地条件等と管理放棄との関連について解析する.
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