研究概要 |
本研究は,X線医学検査による患者の被ばく線量を,多様なX線検査の各々について,日本人標準体型を有する成人と小児(6歳児)の人体等価ファントムの種々の組織・臓器位置に小型で直読可能なフォトダイオード線量計を埋設した人体ファントム臓器線量計測体系を使用して,成人と小児で別々に測定・調査し,我が国におけるX線医学検査による医療被ばくの実態を総合的に解明することを目的としている。本年度は,主に以下の3点について研究を実施した。 1, 我が国で普及が著しい世界4大メーカーの新型64スライスCT装置について,頭部,胸部,腹部の一般的CT検査における成人並びに小児の被ばく線量測定を行い,それぞれの検査における臓器線量,並びに実効線量を明らかにするとともに,これまでに調査した従来型CT装置による被ばく線量や被ばく様式との相違点を解明した。 2, 長時間のX線透視により高線量被ばくする,心臓のカテーテル電気焼灼術の患者の皮膚および各組織・臓器の線量を測定し,最大皮膚線量や各臓器線量を明らかにすると共に,患者に対する被ばく影響を評価した。また,非常な高線量が問題となっている心臓CT検査において,従来の64スライス以下のCT装置と64スライスを越える最新型128スライスや320スライスCT装置による被ばく線量測定を行い,最新型CT装置による顕著な被ばく低減効果を実証した。 3, 上下部消化管X線造影検査,大腸CT検査のような,一般健常人を対象とし,複雑な検査手順を要する消化管X線検査における被検者の被ばく線量を,実際の臨床手順に基づいて正確に測定し,従来不明であった線量レベルを明らかにすると共に,被検者に対する被ばく影響を評価した。
|