研究課題
基盤研究(C)
1.過渡吸収分光測定システムの開発:2チャンネルフォトダイオードアレイ検出器付き分光器を導入し、制御ソフトウェア・ラボビューを用いて分光器、シャッター、光学遅延器と試料移動ステージを制御するためのプログラムの構築を実施した。レーザーのパルス繰り返し(10Hz)に同期した測定のためのシステムの最適化を実施した。また、装置の時間分解能が光学系の最適化により200フェムト秒程度になることを明らかにした。以上により紫外線フェムト秒パルス照射によりDNA中で誘起される分子レベルの過程を初期から測定するための実験装置開発をほぼ完了した。2.DNA膜試料の調製及び鎖切断の評価:プラスミド精製キットを使用し、大腸菌を用いてpUC18プラスミドDNAを調製した後に、石英ガラスプレート上に滴下して、乾燥DNA膜を作成した。照射後の試料の鎖切断量の定量をアガロースゲル電気泳動により実施した。3.DNA損傷の紫外線パルス照射強度及び照射線量依存性測定:数10MW/cm^2から数百GW/cm^2までの紫外線(266nm)照射強度で標記を実施した。1重鎖及び2重鎖切断DNAとDNAダイマー生成が見られた。これらが照射線量と共に増加する一方で、DNAの二重鎖切断が数GW/cm^2の照射強度に閾値を持って起こり、その生成効率も照射強度に依存することが分かった。このことにより、紫外線フェムト秒パルスの2光子吸収によりDNAのイオン化から二重鎖切断が起こることが示唆された。また、レーザー強度の揺らぎを補正した照射強度の評価が可能な測定システムを構築し、信頼性の高いデータ取得を実現した。今後の計画は、DNA損傷の紫外線パルス照射強度及び照射線量依存性をより広い範囲で評価・解析すると共に、本研究の主目的であるDNAの過渡吸収分光測定を実施することである。
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Analytical Biochemistry 362
ページ: 229-235
In : New Research on DNA Damage(editorial book, Nova Science Publishers Inc., NY), to be published.