本研究の目的は、周生期に投与した、ビスフェノールA(BPA)の卵管におよぼす恒久的変化の発生実態と其れ発症機能解明を目指しており、平成18年度の結果を踏まえて、生成19年度の実施を予定した計画は次の通りであり、予定に従って実施された結果をその後に順次記載した。 1.出生日より1週間、1mgBPAを皮下投与して60日齢での卵管構造変化を形態学的に検索したところ、卵管采の欠如或いは卵管間質に強い炎症を示していた。今結果を受けて、平成19年度は、周生期投与のBPAの卵管における影響を経時的に検索する。さらに卵管に強い炎症作用を引き起こす遺伝子の解析をDNAマイクロアレーで検索した。卵管異常は、生後40日以降出現して、60日齢では、約2/3の個体両側あるいは片側性に出現した。RNAを生後40-60日齢の卵管から抽出して、アレーによる網羅的遺伝子解析を行った。卵管中に炎症反応が生じる前と後では発言遺伝の著しい相違が見られ55日以降では、白血球が分泌するサイトカインが急増し、組織変化と強い相関が認められた。 2.卵管異常に関係する遺伝子がCD antigen、 TNFSMに含まれている可能性があり、50日齢から見られる卵管の炎症はこれらの免疫細胞の異常な活性化が原因となっている可能性示唆された。 3.BPA投与で誘導される卵管の異常は、炎症、腫瘍関連遺伝子の発現により生じることが分かったが、定量的方法により、更に詳細な発現を啓示的に追跡することが必要である。
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