研究課題
基盤研究(C)
<研究目的>低濃度の環境汚染物質の脳への影響を、ニューロステロイドの生合成とそれに影響される記憶能力の変動として、生化学的手法(mRNA量の測定)と実験心理学的な手法(オペラント条件付け実験による短期記憶時間の秒単位の測定)によって明らかにすることを目的とした。<研究成果>ラット海馬スライスに環境汚染物質であるトリブチルスズを作用させると、P450 17αとP450aromのmRNA量が増加し、テストステロンとエストラジオールの生合成が活性化された。トリブチルスズは核内レセプターであるRXRに結合するので、RXRのアゴニストである9-cis-レチノイン酸を作用させたところ、トリブチルスズの効果が概ね再現された。よって、トリブチルスズはRXRを介して脳のステロイド合成に影響を与えることが示唆された。成熟ラットの海馬に直接トリブチルスズを投与すると、P450 17αのmRNAの増加が観察されたが、海馬のエストラジオール量には変化は見られなかった。P450 17αが増加するとテストステロンの生合成は増加したはずである。そこで去勢をして脳内のテストステロンを大きく減少させたところ、それでも脳内のエストラジオール量は変化しなかった。この結果は、環境汚染物質などで脳内テストステロン合成やその濃度が変化しても、エストラジオール量は変化しないことを示しており、ニューロステロイド生合成の特異な調節機構の存在をうかがわせる結果である。オペラント条件付け実験では、トリブチルスズが記憶に影響を与えるらしいという予備的な結果が得られたが、現在その再現性を確認している。
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