研究概要 |
環境ホルモンの生物影響評価は、女性ホルモン様作用検出においては研究が進展しているが、男性ホルモン様作用に関しては立ち後れている。それは、化学物質の持つ男性ホルモン作用を評価するツールの開発が遅遅として進んでいないためである。イトヨはその特殊な生物学的特徴から、男性ホルモンおよび女性ホルモン作用の両方を効果的に検出するバイオマーカーを備えている。本研究課題では、それらバイオマーカーを定量するための測定系の構築ならびに曝露試験法の開発を実施した。 平成18年度は、男性ホルモンバイオマーカーであるスピギンの超高感度測定系の開発を行い、正確かつ鋭敏な測定系を確立した。また、女性ホルモンバイオマーカーであるビテロゲニンの精製ならびに抗体作成を行った。 平成19年度には、特異抗体を用いたビテロゲニンの化学発光測定系を確立した。本測定法は、発光検出系の導入により極めて感度の高い測定系となった。また、イトヨ個体を用いて曝露試験を実施する際の曝露条件(曝露日数および曝露水温)の検討も行った。その結果、合成男性ホルモンであるMT0.1,1および10μg/Lの濃度曝露では3日間の曝露で十分な生物学的評価が実施可能であると裏付けられた。さらに曝露試験時の水温影響についても5,10および15℃での曝露を実施し、スピギンmRNA濃度変化を解析したところ、15℃が最も高感度にホルモン作用を発現させることが明らかとなった。 以上本研究課題では、イトヨの優良バイオマーカーを用いた環境ホルモン影響評価法を開発し、極めて実用性の高い測定法ならびに曝露試験法を確立した。
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