研究概要 |
PCBのほ乳動物及びヒトにおける甲状腺ホルモン撹乱作用(特に血中甲状腺ホルモン濃度低下作用)の発現メカニズムを動物種差と考え合わせて解明し、PCBの甲状腺ホルモン撹乱物質としてのヒトに対するリスク評価を行うことを本研究目的とした。 今年度の検討により、Wistar系ラット及びUGTIAファミリーを欠損したラット(Gunnラット)に低用量のKanechlor-500(KC500)(10mg/kg)を10日間連続投与することにより、いずれも血中サイロキシン(T_4)濃度が低下することが明らかになった。また、Wistar系ラットのKC500による血中T_4濃度低下には、従来考えられているT_4-グルクロン酸転移酵素(T_4-UDP-GT)活性の増加よりも、T_4の血中から肝臓への移行が重要な役割を果たしていること、またその移行には血中のT_4とトランスサイレチン(TTR)との結合阻害が関与していることが示唆された。また、4-OH-2,2',3,4',5,5',6-heptachlorobiphenyl(4-OH-CB187)は、低用量(1mg/kg)投与によりマウス血清中T_4濃度を低下させる作用のあること、その作用は3,3',4,4',5-pentachlorobiphenyl(CB126)よりも強力であることが明らかになった。CB126による血清中T_4濃度の低下は、主にアリルハイドロカーボンレセプター(AhR)を介したT_4-UDP-GT活性の増加によって起こるが、4-OH-CB187による血清中T_4濃度の低下は、主に血中T_4の肝臓への移行量の亢進、また血中T_4とTTRとの結合阻害によって起こることが示唆された。
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