研究課題
基盤研究(C)
腐敗を防ぐための様々な添加物が化粧品には含有されており、安全なものとして日常的に我々は使用している。しかし我々の皮膚は紫外線に曝されており、その影響を無視することはできない。本研究では、化粧品添加物が皮膚に与える影響を遺伝子発現解析により検討し、従来の安全性試験では見過ごしてしまうような潜在的ではあるが長期にわたり少しずつ暴露した場合に、やがて顕在化するような毒性の発現予測の評価法の確立を目的としている。モデル添加物としては安全な化粧品添加物として使用されてきたメチルパラベン、2-オクタンジオール、2-フェノキシエタノールを使用した。培養皮膚ケラチノサイト(HaCaT)に対して毒性が現れない添加物の濃度、もしくは紫外線照射量を設定し、これをもとにしてsubtoxicな濃度の添加物単独の使用もしくは紫外線単独の照射、および両者併用時のヒト正常皮膚ケラチノサイトの遺伝子発現のパターンをGene Chipを用いて網羅的にスクリーニングし、毒性発現に関与する標的遺伝子を検討した。その結果、それぞれの群において酸化ストレス関連遺伝子、転写因子関連遺伝子、アポトーシス関連遺伝子などの発現増強がみられることが判明した。この結果に基づき、分子生物学的な手法を用いて検討をおこなったところ、最も多く使用されており、安全とされている優れた化粧品添加物であるメチルパラベンを添加した皮膚ケラチノサイトが紫外線照射により酸化ストレスを介してアポトーシスをひきおこすことが判明した。このアポトーシスが、抗酸化物質であるアルファトコフェロールにより抑制されることも見いだしている。
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Toxicology 227巻
ページ: 62-72
Toxicology 227(1-2)