研究概要 |
1.1H,1H,2H,2H-ペルフルオロデカノールの代謝経路の検討:ラットやマウスに1H,1H,2H,2H-ペルフルオロデカノールからペルフルオロオクタン酸(PFOA)が生成する機構を調べた。In vivoでシトクロムP450阻害剤や、アルコールデヒドロゲナーゼ阻害剤を投与することにより、PFOAの濃度が顕著に低下し、その結果、肝臓のアシルCoAオキシダーゼ誘導作用が減弱された。したがって、肝臓の肝臓のアシルCoAオキシダーゼ誘導作用は1H,1H,2H,2H-ペルフルオロデカノール自体、あるいは中間代謝物の作用ではなく、最終代謝物であるPFOAによるものであることが示唆された。一方、1H,1H,2H,2H-ペルフルオロデカノールの中間代謝物と考えられる2H,2H-ペルフルオロデカン酸について、マウスにこれを投与しその生体影響を調べたところ、用量依存的な肝肥大効果とPFOA蓄積が認められた。LD50値はPFOAよりもむしろ低かったことから、2H,2H-ペルフルオロデカン酸自体の毒性を考慮する必要性が明らかとなった。 2.PFOAの生体蓄積性に関する検討:PFOA、は生体残留性が高いとされているが、ラットに高用量のPFOAを投与した場合、血中消失半減期は約7日と短い。そとで高度に生成した放射標識PFOAを用いて、体内分布の用量依存性を検討した。0.1μmol/kgを投与した場合、40μmol/kgと比較して、肝臓への分布割合が顕著に増加した。また、肝細胞内の分布を調べたところ、高濃度の場合には可溶性画分に多く分布するが、低濃度になると膜画分に多く分布した。膜画分への分布割合が高いと、胆汁に排泄されにくいことが示された。以上の結果から、低濃度のPFOAは肝臓の膜成分に親和性が強く、その結果生体内にとどまりやすいものと考えられる。
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