研究概要 |
1H,1H,2H,2H-ペルフルオロデカノールを投与すると生体内でペルフルオロオクタン酸(PFOA)が生成し、肝臓のアシルCoAオキシダーゼ(AOX)が誘導される。しかし、生体内に残留するPFOA濃度が低いにもかかわらず強い誘導が生じることから、中間代謝物と考えられている2H,2H-ペルフルオロデカン酸(8-2テロマー酸)と2H,2H,3H,3H-ペルフルオロデカン酸(7-3テロマー酸)をマウスに投与して、その生体作用を解析した。8-2テロマー酸や7-3テロマー酸を投与すると、PFOAよりも高い用量で弱いながらも肝AOXを誘導した。8-2テロマー酸の作用は7-3テロマー酸より強かった。8-2テロマー酸を投与した場合、肝臓中からは微量のPFOAが検出された。肝臓中のPFOAと肝AOXの相関を調べたところ、テロマー酸を投与した揚合には肝臓中のPFOA濃度が低い割には肝AOX活性が高いことから、テロマー酸そのものもAOX誘導作用を持つ可能性が示唆された。8-2テロマー酸や7-3テロマー酸はそれ自身が弱い作用を有するとともに、一部がPFOAに代謝されて作用するものと考えられる。 生体内で微量に生成したPFOAは、主として肝臓中に蓄積する。肝細胞内におけるPFOAの分布には大きな性差が認められ、雌性ラットでは主として可溶性画分に、雄性ラットでは膜画分に見出された。雄ラットでは離乳時には雌型である細胞内分布様式が、成長とともに雄型へと変化した。雄性ラットを去勢すると、PFOAの肝細胞内分布様式は雌型となり、テストステロンを投与することによって雄型に戻ることから、性ホルモンによって調節される何らかの因子が、肝細胞内での今布様式を調節することが示唆された。
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