研究課題/領域番号 |
18510064
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研究種目 |
基盤研究(C)
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研究機関 | 産業医科大学 |
研究代表者 |
笛田 由紀子 産業医科大学, 産業保健学部, 助手 (10132482)
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研究分担者 |
保利 一 産業医科大学, 産業保健学部, 教授 (70140902)
上野 晋 産業医科大学, 医学部, 講師 (00279324)
吉田 安宏 産業医科大学, 医学部, 講師 (10309958)
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キーワード | 次世代影響 / 中枢神経毒性 / 海馬スライス / 1-プロモプロパン / エチルベンゼン / 臭素イオン濃度 |
研究概要 |
【背景と目的】労働衛生の分野において大量に使用されながらも中枢神経系への影響評価が不明なガス状化学物質について、胎児期曝露による次世代への影響を検討している。本申請課題初年度は、次世代脳への影響評価を確立する目的で、1-プロモプロパン(1-BP)を胎児曝露された仔ラット幼若脳を電気生理学的に調べ、さらに授乳曝露の影響を調べた。また、中枢神経への影響が懸念されつつも毒性情報がほとんどなく、トルエンにならって許容濃度が50ppmに定められたエチルベンゼン(EB)について亜慢性曝露をマウスに実施し脳への影響を調べる実験を開始した。 【方法】1-BP:妊娠ラットのday1-20の20日間1-BP(700ppm)を曝露したのち、PND1において対照群と曝露群の仔を入れ替えて哺育させた(Cross-fostering)。曝露指標として脳・乳汁・肝臓のBr濃度を生後1週間にわたり測定し、1-コンパートメントモデルで脳内Br濃度への授乳曝露影響を解析した。EB:雄性BALB/Cマウス(5週令)に濃度1000ppmで4週間(3時間/日、5日/週)吸入曝露した。4週曝露による体重増加、摂食量、摂水量への影響、行動の変化、血液生化学を調べ、神経毒性については脳内海馬スライス標本で刺激応答性、抑制系、LTPへの影響を解析した。 【結果と考察】生後第2週の海馬CA1領域では日ごとにシナプス応答や神経興奮の同期性ができてくる。1-BPを胎児曝露した仔ラットの海馬ではPND14において興奮性発達が亢進しており発達の時計が早まることが示唆された。また曝露ラット群の体重増加の抑制は授乳の影響であり、1-コンパートメントモデルの解析によって乳汁内Brにより第2週以降まで脳内にBrが残る可能性が示唆された。また、成熟期海馬での興奮性の抑制は授乳というよりも胎児期曝露の影響であることが示唆された。今後は授乳曝露による脳への影響の有無を検討する。EBについては、ACGIHの勧告が100ppmであることから、1000ppm濃度で暴露を開始したが、初日の4-5時間曝露で約1割のマウスが歩行失調から痙攣発作をおこした。これより、曝露時間を3時間に短縮した。体重増加の亢進、抑制の減弱が見られた。1000ppmでけいれんという報告はかつてなく、さらに脱抑制との関連性の検討をすすめる。 【結論】体重増加の抑制には1-BPの授乳曝露の影響が明確になった。来年度は海馬興奮性の亢進についても授乳曝露の影響を明らかにする。EBについて曝露1日目にけいれんを有するマウス個体があったことは報告がない。したがって来年度は濃度・週令などを加味して、今後はけいれんと脱抑制との関連性を検討する必要がある。
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