研究課題/領域番号 |
18510064
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研究機関 | 産業医科大学 |
研究代表者 |
笛田 由紀子 産業医科大学, 産業保健学部, 助教 (10132482)
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研究分担者 |
保利 一 産業医科大学, 産業保健学部, 教授 (70140902)
上野 晋 産業医科大学, 医学部, 講師 (00279324)
吉田 安宏 産業医科大学, 医学部, 准教授 (10309958)
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キーワード | 環境化学物質 / 次世代影響 / 神経発達毒性 / 神経興奮性 / 脳スライス / 薬物感受性 / 行動指標 |
研究概要 |
【目的】本研究課題は「ガス状化学物質による脳の次世代にわたる影響を明らかにし、脳障害リスク評価の基礎的データを得る」ことを目的とした。最終年度は、脳スライス、薬物感受性、不安情動行動など、成長を追って調べ、総合的に評価できるデータを得ることを目的とした。 【最終年度の結果と考察】 1. 1-ブロモプロパン胎児曝露群では、生後14日めにシナプス伝達と集合スパイク電位の応答性の亢進が再現性よくみられ、Naチャネルの発現量増加を伴っていた。さらにスパイク電位の応答比が低下していた。しかし、12-14週令では刺激応答性と比にみられた影響は消失した。胎児曝露の脳興奮性への影響は成長とともに修復され中枢神経系の可塑的潜在能力が示唆された。2. 生後14日の両群の仔ラットにペンチレンテトラゾール(60mg/kg)を投与したところ、ミオクローヌスを呈した個体の割合と潜時は両群で差はなかったが、曝露群では15分の観察時間内では全般化発作はなかった。薬物への反応性が胎児曝露によって修飾された可能性が高く、さらに、海馬での受容体分布密度が高いカイニン酸を使って全般化の違いを調べる必要がある。3. 高架十字迷路を5週令と13週令に行ったが、胎児曝露の影響はみられなかった。オープンフィールド試験では、4週令では活動性の増加傾向が見られたが顕著な差は見られなかった。しかし、12週令では、対照群に比べて活動運動量の著しい低下がみられた。成長後に胎児曝露の影響が顕著に現れる行動指標があることが判明した。4. 出生直前と生後2日における血中テストステロン濃度には両群で差はなかった。よって、観察された上記の影響は、性ホルモンを介した発達の変化というよりも、中枢神経系の発達そのものへの影響と解釈された。 【結論】1-ブロモプロパン胎児曝露による影響が次世代の幼若期から成長後にわたって長期にわたる可能性が示唆された。影響指標が多岐にわたることから、次世代の脳への影響評価については、メカニズムベースで多角的に行う必要がある。
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