研究課題/領域番号 |
18510066
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研究機関 | 国立医薬品食品衛生研究所 |
研究代表者 |
井上 達 国立医薬品食品衛生研究所, 安全性生物試験研究センター, センター長 (50100110)
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研究分担者 |
平林 容子 安全性生物試験研究センター, 毒性部, 室長 (30291115)
壷井 功 日本大学, 医学部, 講師 (30350028)
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キーワード | Ah受容体 / 造血幹細胞 / 遺伝子改変動物 / 細胞周期 / CYP2E1 / Ah受容体ノックアウトマウス / ベンゼン / ベンゼン代謝物 |
研究概要 |
目的に即して、(1)アリールハイドロカーボン受容体(AhR)の酸化的ストレスの消去への貢献、(2)ベンゼン代謝酵素系CYP2E1のAhRを介した臓器特異的生体異物相互作用の2点について検討した。 (1)大気中(異物非曝露下)で、AhR欠失(KO)マウスでの未分化造血幹細胞(KSL(c-kit+SCA-1+Lin・))分画は、野生型のそれよりも小さい。これは体重あたりに換算しても同様で、AhRによるKSL分画の未熟性(dormancy)の維持仮説を支持する。この関係は、野生型のKSL分画のDCFH-DA色素の蛍光強度の過酸化水素(H_2O_2)曝露による増加、KOマウスのKSL分画のH_2O_2非曝露状態での野生型マウスより明瞭な増加と、H_2O_2曝露状態での更に顕著な増加として観察され、AhRの酸化的ストレス消去への貢献と符合していた。興味深いことに、K^dullSL(c-kit^dullSCA-1+Lin-)分画でも、野生型でH_2O_2曝露により蛍光強度の上昇が認められるが、他方KOマウスでは、非曝露では野生型のそれに留まったものの、曝露下ではより顕著な蛍光強度の増加が認められた。これは、AhRがKSL分画並びにK^dullSL分画で、より顕著な酸化的ストレス消去への役割を果たしていることを示唆している。 (2)既報のとおり、AhR-KOマウスではベンゼンを介した造血障害が認められない。この現象の臓器特異的発現機構を明らかにするために、骨髄と肝等に分別して観察する骨髄移植系により、ベンゼン毒性を観察し、骨髄のベンゼン誘発造血障害が、骨髄、特に骨髄造血前駆細胞のAhRに依存し、末梢血のベンゼン誘発造血障害が、肝等、骨髄以外の組織におけるAhRに分別的に依存していることの示唆を得た。
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