研究課題
本研究課題では、アリールハイドロカーボン受容体(AhR)が造血前駆細胞に特異的に発現していることにより、ベンゼンが造血前駆細胞特異的に惹き起こすAhRを介した造血障害の機構が明らかになってきたこと、他方、ベンゼンの分化型血液細胞の障害は、Cyp2E1の臓器特異的な発現(肝を想定)により惹起されること、の2点が従来の報告にないユニークな知見として明らかになった。また、これらの解析中に、肝のCyp2E1の発現の誘導が骨髄移植系で施行される致死線量レベルの放射線による細胞障害により阻害を受ける現象と、AhRノックアウト(KO)マウスにおける交配不全の原因が精巣におけるホモKO細胞の分化に起因する相対的機能低下によることとの、2点も見出された。尚、AhRの造血幹細胞特異的生物機能については、1)AhRが分子進化に果たした役割、2)AhRの造血前駆細胞の細胞周期制御に対する役割、及び3)その異物相互作用の上での役割の3点に要約して専門誌にまとめた。ここで取り上げたAhRのベンゼンの毒性発現機構の上での役割については、一義的にはこれがAhRを介することが実験的に証明され、これに骨髄特異的なCyp2E1の発現の関与が想定されるところまで明らかになった。他方、KOマウスへの野生型マウス骨髄細胞の移植により、ベンゼン曝露では、分化型造血細胞に限局した血液障害が認められ、これに対する裏実験の結果も得られたので、分化型血球の障害がAhRを介さない、おそらく肝におけるCyp2E1による直接的な臓器特異的障害性と考えられることを初めて見出す結果となった。尚、上記の肝を想定するCyp2E1の発現は、致死線量を照射した骨髄移植系で野生型を受け手とした移植では認められるものの、KOマウスを受け手とした移植では低下しており、更に、移植骨髄の遺伝型の如何によらず、いずれの系でもベンゼンによる発現誘導は認められなかった。従って、これはcvpの誘導が肝障害によって阻害されたものと想定された。
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