研究概要 |
秋田の地域性から培われた土壌浄化技術を改良し、汚染された土壌の浄化と資源の有効利用に向けて基礎的な実験を実施した。平成18年度は,対象地域として秋田大学と交流協定を結んでいるチュニジア共和国のスファックス市の工業地域とした。研究代表者と分担者が,スファックス市を訪れ現地調査を実施すると共に,スファックス大学環境研究所のチームおよび,リン酸系農業肥料工場の製造スタッフとの打ち合わせを実施した。現地より採取した工業堆積残渣をサンプルとして,分析と資源回収を試みた結果,リン酸系農業肥料工場より排出された堆積残渣は,石膏(CaSO_4)が主な構成物質である.汚染物質としては,硫酸によりpH1.8程度の強酸性になっていることである。その他の金属も検出されるが毒性を示すことはなくまた,有効利用できるような量は存在しなかった。そのだめ,リサイクルする対象資源としては石膏のみとした。 鉱山技術である浮遊選鉱法(浮選と呼ぶ)を用いて純度の高い白色石膏を取り出すことが可能であった。浮選を効率的に実施するため,凝集剤として硫酸アルミニウムを添加しところ,石膏の回収率を向上させることに成功した。これらの石膏品位を調べたところ,セメントの遅延剤として使用できる品位に十分達していることが確認された。 次に,残渣を洗浄した強酸性の溶液は,炭酸カルシウムによる中和を実施した。残渣試料100gから得られる酸性水溶液に対して,およそ3gの炭酸カルシウムを加えることで,pH6になり中和することができた。 今後,石膏の回収と溶液の中和効率を上げるために,浮選に平行して鉱山に生息するリーチング菌を用いた洗浄効果を確認するために検討を開始した。石膏残渣の水溶液はT.ferrooxidans菌が生息するのに適したpH2程度の硫酸酸性になっているので,石膏から不純物を取り除くのに大きな効果が期待される。
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