研究概要 |
汚染された土壌の浄化と資源の有効利用に向けて基礎的な実験を実施した。具体的には、チュニジア共和国のスファックス市のリン酸系農業肥料工場より排出された硫酸で汚染された堆積残渣を中和して資源である石膏(CaSO_4)を抽出することである。 鉱山技術である浮遊選鉱法(浮選と呼ぶ)を用いて純度の高い白色石膏を取り出すことが可能であった。浮選の凝集剤として硫酸アルミニウムを添加しところ,石膏の回収率を向上させることに成功した。石膏品位を調べたところ,セメントの遅延剤として使用できる品位に十分達していることが確認された。 汚染物質の硫酸により残渣はpH1.8程度の強酸性になっている。残渣を洗浄した強酸性の溶液は,炭酸カルシウムによる中和を実施した。残渣試料100gから得られる酸性水溶液に対して,およそ3gの炭酸カルシウムを加えることで,pH6になり中和することができた。 さらに、微生物の作用による中和の可能性を検討した。アンモニアを生成する3種類の細菌、Rhizopus delmer,Aspergillus niger,MJKC25を用いた。まず、残渣100gに精製水100mlを加えたものを濾過して上澄み水を含むLB寒天培地に、上記の細菌を植えつけて観察した。pH指示薬のメチルレッドの色が赤色から黄色に変化したことから、いずれの菌においても強酸性倍地中での生息と中和作用が確認された。出発時のpHが4.9から6.3の場合は、4日程度の期間でpHは7から8に上昇することから、中和作用が確認された。一方では、出発時のpHが3に近い場合は、ほとんど中和が確認できなかった。以上のことから、残渣から染み出すpH5以上の排水を対象として、細菌による中和処理は可能であることが検証された。
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