研究概要 |
漏洩リスクの無い安定的な貯留メカニズムである残留ガストラップと溶解トラップに注目し,これらのメカニズムによる貯留量の定量的な計測を行い,貯留量を実験的に明らかにするともに,格子ボルツマン法を用いた数値シミュレーションを通じて,貯留メカニズムの解明を行った.典型的な岩石としてベレア砂岩,多胡砂岩を対象として,残留ガス飽和度の計測を行った.地下,700mの条件にて二酸化炭素は超臨界状態となり,温度・圧力により,粘性,密度,界面張力が大きく変化するので,700-1000mに対応する7種の条件にて計測を行った.また,ガスの残留量を計測する手法として,等温膨張を用いる手法を提案するとともに,この方法により,高精度で残留ガス量を計測できることを明らかにした.計測の結果,実験条件によらずベレア砂岩の場合,25-30%の二酸化炭素が界面張力によりトラップされることが明らかとなった.これらの実験結果に基づいて日本の残留および溶解トラップによる二酸化炭素地下貯留量を推定したところ,716.7億トンの貯留ポテンシャルが存在することが明らかとなった.キャップロックによる物理トラップと併せて,1018億トンの貯留ポテンシャルが存在し,これは日本の二酸化炭素排出量の約76年分に相当する.一方,ミクロなレベルからトラップメカニズムを解明するために,格子ボルツマン法による数値シミュレーションを試みた.本年度の成果として,地下1000mに対応する水と二酸化炭素の粘性,密度,界面張力を考慮した数値解析に成功し,残留ガストラップ状態を再現することに成功した.このように,残留ガストラップと溶解トラップを用いることにより,漏洩リスクの無い日本に適した二酸化炭素貯留が可能であることが示された.引き続き,残留ガストラップ状態を実際に地下において再現するための方法や詳細なトラップメカニズムについて検討を継続する予定である.
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