TiO_2薄膜の可視光応答性を改善するために、WO_3膜を下地層とするTiO_2/WO_3二層膜を形成し、水中環境ホルモン、特に代表的な女性ホルモンである17βエストラジオールの分解実験を行い、二層化による効果を調べた。 WO_3膜は高純度Wターゲットを、ArとOの混合ガス中で対向ターゲット式スパッタ装置を用いて成膜された。形成されたWO_3膜はアモルファスに近い状態を示すので、その結晶性を改善する目的で、アニール処理(酸素雰囲気中、400℃、2時間)を施した。その結果、XRDの測定から結晶性が著しく改善され、透過率の吸収端も可視光の長波長側にシフトし、AFMの観察からは、Rmsの値が大きくなり、表面微細構造も大きく変化した。 上記でアニール処理されたWO_3(以下、anl-WO_3と略記)膜上にTiO_2膜を対向ターゲット式スパッタ装置により形成させ、TiO_2/anl-WO_3二層膜を作製した。 環境ホルモンの分解は、シャーレに9.1×10^<-4>mol/Lに調整した17βエストラジオールの溶液(40 ml)中にTiO_2/anl-WO_3二層膜を保持、固定し、スターラーで撹絆しながら薄膜に人工太陽光を照射し、30分間隔で、2回ずつマイクロシリンジ(5μ1)を用いて溶液を採取した。HPLCを用いて、その溶液のクロマトグラムを測定し、17βエストラジオールのピークの高さを測定した。 TiO_2/anl-WO_3二層膜の方が、TiO_2単層膜の場合よりも、分解効率が向上し、共に、最初の量と6時間後のそれと比較すると、TiO_2/anl-WO_3二層膜では約57%、TiO_2単層膜では約45%の量が分解された。このことにより、下地のanl-WO_3膜が太陽光中の可視光を有効に吸収しており、これによってTiO_2単層膜の光活性が改善されてことが明らかにされた。
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