研究概要 |
バイオマスプラスチックとして注目されているポリ乳酸(PLA)のモノマーである乳酸には、光学異性体がある。優れた物性を持つポリ乳酸を製造するためには、光学純度の高い乳酸が必要である。しかし、このような必要性が高まっているにも関わらず、実用化を考慮した乳酸の光学異性体を分離および精製する方法はない。本研究では、乳酸の光学異性体に対し、超臨界流体二酸化炭素を用いて抽出(SFE)・精製およびクロマトグラフィー分離(SFC)をする技術の開発を目的とした。PLAのアルコリシス化の結果、反応溶媒にエタノールを用いた場合、反応温度220〜260℃でエステル化が促進され、乳酸エチルの収率は80%以上であった。SFCによる光学分割では、温度40〜42℃、モディファイヤ流量0.01〜0.02ml/minで光学分割が可能であることが確認された。しかし、本結果で得られた保持係数は一般的な光学活性物質に比べ著しく小さいため、改善が必要であることも示された。分離された乳酸エチルからのプレポリマー重合の検討も行った。この結果、温度と圧力を三段階に分け、徐々に変化させることで分子量Mw7,700〜8,200のプレポリマーが合成されることが確認できた。このようなSFCの利用は一般的にコスト高になる恐れがあるため、フィージビリティ・スタディを行った。その結果、年間1.2〜2.4万トン規模の擬似移動床を用いることにより、採算性の確保が可能であると推計された。これらの実験的な検討に併せ、PLAリサイクルが実現した場合の効果を評価するため、PLAのライフサイクルにおけるエネルギー的評価を行った。この結果、PLAのケミカルリサイクルは、資源およびPLA製造エネルギー使用量の低減に効果があると推計された。
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