研究概要 |
顕在化する土壌汚染の効率的浄化や,低環境負荷の施肥技術の確立,また低コストの土壌環境保全技術として,土壌中の移流・分散制御による選択的物質輸送を用いた省資源・低コスト土壌環境管理を実践した.粗大間隙は自然に存在する物であるが,望ましい部位に溶液が留まらず下方へ流れてしまうため,上記目的のためには障害となっていた.本研究では,土壌浸透の境界条件を変えることで溶液の浸透領域を変え,効率的な汚染土壌浄化を目指した. 土壌カラム実験として油汚染土壌を用意し,土壌の間隙構造(粗間隙あり,なし)と浸透速度に違いをもうけて,栄養塩を効率よく浸透させる技術の構築を目指した.浄化率に加えて,土壌の透水性,栄養塩の利用効率,微生物活性,栄養塩による環境への負荷についても考察をした.その結果,流量大・粗間隙なしの条件は土粒子または微生物による透水性の低下が起きた.また,飽和・還元状態のため栄養塩の利用効率は悪かった.一方,流量小・粗間隙ありの条件は不飽和状態で土壌の透水性を維持し,酸化状態で栄養塩の利用効率は良かった.さらに,飽和に比べて環境への負荷は少なく低コストで汚染土壌を浄化できることが示された.この違いはX線非破壊検査でも確認でき,栄養塩の浸透領域としても違いが現れた.積極的に栄養塩を迅速に浸透させようとする一般論とは逆説的であるが,土壌に粗間隙があり,栄養塩の注入速度を遅くしたものの方が土壌内の分散が卓越し,微生物に効率よく栄養塩が供給できた. 同様に砂質土壌で2点からの地中灌漑を行うと深い部分からの灌漑が水分を制御することによって浅い部分の水が効率的に根群域に留まり,水利用効率が上がることが確認された.さらに,自然土壌中の溶液を直接採取して分析すると有機態窒素の濃度が卓越しており,栄養塩の到達領域やその効率を現場で精査するためには有機態窒素の存在が無視できない事が明らかになった.
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