下水汚泥の減量化と資源を目的に、汚泥中に存在する自然の乳酸菌を利用して、余剰汚泥から乳酸を生成させると共に汚泥そのものも減量されることを見出し、研究を展開してきた。本年度は、分離・同定した下水汚泥分解菌と乳酸菌を使用して、溶解汚泥から乳酸を生産することおよび汚泥溶解プロテアーゼの精製とその特性の解明などを研究目的とし、次の成果を得た。 1.余剰汚泥をBrevibacillus sp.KH3株とBacillus sp.KH4株で5日間溶解したところ、タンパク質濃度では対照の約2.5倍、糖濃度では約2倍の昇がみられた。 2.溶解汚泥の上清にショ糖50mMを添加し、分離・同定したLactobacillus acidophilusで乳酸発酵を5日間行ったところ、対照と比較して約6〜9倍の乳酸生成に成功した。 3.KH3株放出の約40kDaのセリンプロテアーゼは、phenyl-TOYOPEARLやDEAE Sepharose FFなどにより、単一バンドとして精製でき(精製度92.1倍)、その精製法を確立した。 4.このプロテアーゼは、酵素活性と汚泥溶解率に相関性があり、汚泥溶解因子であることが判明した。 5.プロテアーゼのアミノ酸配列はT(F)LQT(I)RY-A-Hであり、既知のセリンプロテアーゼとの相同性を調べたが、その相同性の一致が見られないので、新規のプロテアーゼと考えられる。
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