研究概要 |
前年度のリパーゼのスクリーニングの反応時間を48hから120hに延長することにより、リッド開放処理を行うことなく多くの粉末リパーゼがほぼ定量的に米油トリグリセリドとDMCとから40℃又は50℃でBDF(=FAMEs)を生成することがわかった。それらの中でBurkholderia cepacia起源のリパーゼ(BCL)とAlcaligenes sp.のリパーゼPLとともに高活性であったAlcaligenes sp.のリパーゼQLMを用いて (1)架橋酵素凝集体(CLEAs)法、そして(2)多孔性ポリプロピレン粉末のAccurel MP-1000への吸着法、によって固定化酵素を調製した。(1)のCLEAs法ではQLMリン酸緩衝液水溶液に添加剤としてSDS、Triton X-100、18-クラウン-6(CRN)を用い、硫酸アンモニウム、アセトン、又は1,2-ジメトキシエタン(DME)で沈澱させ、生成した凝集体をグルタルアルデヒド水溶液で架橋した。一方、 (2)の吸着法ではAccurel担体にエタノールを浸漬後、QLM水溶液を添加して調製した。調製した固定化QLMを標準反応条件(米油2mL、DMC 3mL、固定化QLM 200mg(Accurelでは500mg)、50℃、120h)でメチル化活性を測定したところ、添加効果はSDSとTritonには認められなかったが、アセトンとDMEを沈澱剤に用いた場合のCLEAsは水系での調製物よりも、また、native QLM(粉末状)よりも著しく高活性であった。また、Accurel固定化QLMの活性はCLEAs法調製物のどれよりも、従ってnative QLMよりも、著しく高活性で24hですでにFAMEs収率はすでに90%に到達した。これらの結果からAccurel固定化物とアセトンとDMEを沈澱剤に用いたCLEAs法固定化物はリッドが開放されている固定化リパーゼが調製されているものと推察した。 そして、高活性を示したこれらの固定化QLM、CLEAs-アセトン、CLEAS-DME、CLEAs-DME-CRN、Accurel、そして、native QLMを一回分(50℃、72h)の反応を同じ触媒で繰り返し行って固定化リパーゼの再利用性を調べたところ、Accurel固定化QLMは、とくに、BDF合成活性の半減期が30,000h(Runサイクル418回:1250日、3年)と非常に長期にわたって安定であることがわかった。一方のグリセリン相については分析の結果、グリセリン-1、2-カーボネートとそのメトキシカルボニルエステル、そして、グリセリン-トリ(メトキシカルボニル)エステルが主成分であり、グリセリンそのものではなく、また、化学触媒法のグリセリン1、2-カーボネートメトキシカルボニルエステルだけではないためFAMEs相と分離してくることがわかった。 総括として酵素のコストを除いては最も二酸化炭素排出の少ない、油脂からのBDF製造法を見い出すことができた。
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