バイオマスプラスチックポリ乳酸(PLA)に導電性フィラーとしてケッチェンブラックを充填したPLAナノコンポジットの導電性の発現機構を明らかにするために、平成18年度は次の実験を行った。 i)はじめにPLAナノコンポジットについて、どの程度のファイラー濃度から導電性が発現するかを調べた。バッチ式のラボプラストミルを使用してPLA/ケッチェンブラックナノコンポジットを作成した。ケッチェンブラック濃度は1〜10wt%の範囲で調製した。作成したPLA/ケッチェンブラックコンポジットをホットプレス機により厚さ2mmのシートに成形し、コンポジットの導電率を測定し、ケッチェンブラック濃度と導電性の関係について調べた。 ii)次に、PLA/ケッチェンブラックナノコンポジットに関して、フィラーの分散状態あるいは凝集状態がコンポジットの導電パス形成にどのよう関係するかを調べるために、調整したコンポジットに回転型レオメーターを用いて一定のせん断を与え、フィラーの分散の進行と同時に導電性を測定した。フィラーの分散状態は一定量のせん断を与えた後に動的測定を行い、コンポジットの動的弾性率をフィラーの分散状態の指標とした。また、せん断後の試料を回収し、TEM観察を行い、画像解析からも分散の状態を評価した。以上の実験は本年度に申請購入した機器を用いて実施した。 上記の実験を行い次の成果を得た。 i)の実験の成果は、2%以上のフィラー濃度でコンポジットの導電率が急激に増加し、PLA/ケッチェンブラックコンポジットの導電性出現にはフィラー濃度の閾値があることがわかった。またフィラー濃度と導電性の関係は、パーコレーション理論に基づくスケーリング則が適用できることがわかった。 ii)の実験の成果は、コンポジットの導電性と動的弾性率には良い相関性があること、導電性の付与にはケッチェンブラックの凝集ネットワーク構造を破壊しないせん断量を与えることが必要であることを明らかにした。
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