ポリ乳酸(PLA)は植物由来のプラスチックであり、化石資源の節約やCO2の増加を抑制できるなどの期待から、近年、PLAの利用拡大に向けての材料開発の研究が注目されている。本研究では、溶融混練法によりPLAにナノサイズの導電性カーボンフィラーを充填し、ナノコンポジット化することでPLAに導電性の機能を付与し、カーボンフィラーの分散状態と導電性の関係を詳細に調べることで、導電性PLA材料の開発に向けての設計指針を得ることを目的とする。 昨年度の研究成果から、PLAに導電性カーボンフィラーとしてケッチェンブラックを充填したPLAナノコンポジットの導電性に関して次のことを明らかにした。 (1)導電性出現にはフィラー濃度の閾値があり、ケッチェンブラックの閾値濃度は1%である。 (2)ケッチェンブラック濃度と導電性の関係は、パーコレーション理論に基づくスケーリング則が適用できる。 (3)導電性はケッチェンブラック粒子の分散状態により大きく影響を受ける。 (4)導電性の維持には、溶融混練時にケッチェンブラック粒子のネットワーク構造を破壊しない大きさのせん断を与えることが重要である。 (5)ケッチェンブラックの粒子ネットワーク構造の状態はコンポジットの動的弾性率から評価できる。 (6)導電性と動的弾性率には良い相関性がある。 (7)上記の結果は粒子形状の異なる導電性カーボンナノファイバについても適用できることを実験的に確かめた。
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