研究概要 |
ポリ乳酸(PLA)は化石資源の消費節約やCO2の増加を抑制できるプラスチック材料として近年その利用が注目されている。 本研究では、溶融混練法によりPLAにナノサイズの導電性粒子(カーボンブラック)を充填したPLAナノコンポジットを作成し、フィラーの分散状態と導電性の関係を詳細に調べることで、導電性機能を持つPLA材料の開発に向けての設計指針を得ることを目的とする。 平成18年〜19年度に実施した研究成果では、(1)導電性出現にはフィラー濃度の閾値がある。(2)フィラー濃度と導電性の関係は、パーコレーション理論に基づくスケーリング則が適用できる。(3)スケーリング則のパラメータから、粒状及び繊維状の導電性フィラーともに閾値濃度はほぼ1%(体積分率)の値を示す。(4)コンポジットの動的弾性率と導電性には良い相関性があり、動的弾性率はコンポジットの導電性ネットワーク形成の一つの指標と見なせることなどを明らかにした。プラスチック材料を製品化する場合、射出成形法がよく利用される。この場合試料は高速せん断の影響を受けフィラーが配向し表面にスキン層(樹脂層)を形成して導電性が著しく低下する。最終年度では、このスキン層を防止する方法について実験的に検討し、(5)PLA及び導電性フィラーと親和性のある樹脂(PLAエステル共重合体)を25部添加することでスキン層の形成は抑制できる。(6)またこれによりコンポジットの衝撃強度も改善できることを明らかにした。以上の成果は、まとめてJ. Polym. Proc., 2009に投稿準備中である。
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