本研究は、溶融混練法における導電性PLAナノコンポジット材料の開発に関して炭素系導電性フィラーの分散状態と導電性の関係を実験的に調べた。導電性フィラーには粒状タイプのケッチェンブラックKB(1次粒子径=3.4nm)と繊維状タイプのVGCF(繊維径=100nm)の2種類を使用した。KB及びVGCFともに導電性発現にはフィラー濃度の閾値があり、閾値濃度は体積分率で約1%の値を示した。フィラー濃度と導電性の関係は、パーコレーション理論に基づくスケーリング則が適用できた。コンポジットの導電性と動的弾性率には良い相関性があり、動的弾性率はコンポジットの導電性ネットワーク形成の一つの指標と見なせる。また成形時に形成されるコンポジット表面の樹脂層(スキン層)を防止するにはPLAに親和性のある樹脂(PLAエステル共重合体)を25部添加することでスキン層形成は大幅に抑制できた。これによりコンポジットの衝撃強度も改善できることなどを明らかにした。
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