研究概要 |
1.これまで行ってきた巨視的マクスウェル方程式を微視的非局所応答理論の基礎方程式に長波長近似を加えて,従来より論理的・数学的に明瞭な方法で再構築する研究の細部を固める観点から,次の4点について詳細な考察を行った:(a)(クーロン)ゲージの選択と物質ハミルトニアンの定義は独立の作業であること,(b)解析力学で許される変換の範囲で,物質と電磁場の相互作用ハミルトニアンを電場Eと磁場Hの線形項で表すことは厳密にはできないこと,(c)新感受率の表式中でスピンゼーマン項の波数依存性をあらわに書くこと,(d)これまで磁気感受率の定義の当否を判定するものとして提案していた実験は(b)の結論から言って,むしろ新形式と旧形式の違いを判定する実験と考えるべきであることの4点で,これまでの定式化の確認と部分的修正になっている. 2.上記の再構築において結晶原子の内殻共鳴遷移に注目すると,X線の共鳴回折理論になり,回折を与える感受率が共鳴遷移の多重極行列要素で与えられる.特に電気・磁気双極子遷移が絡み合うキラル対称の場合を直ちに扱える形になっているのが注目すべき点で,(実験家に依れば)これまで定式化のない「キラル対称の場合に禁制ビームの強度を与える式になっている.現在これを用いて,X線の共鳴ブラッグ散乱における禁制ビームの測定から左・右水晶を弁別する実験(Y.Tanaka et al.,Phys.Rev.Lett.100(2008)145502)の解析を試みている.
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