本研究では、(1)周期的なナノ構造を有するポーラスシリコン、(2)ナノ構造を有する酸化物半導体(TiO_2)ナノ粒子やナノチューブの薄膜を対象にして、そのナノ構造とmorphologyをコントロールし、ガスセンシング機能の特性評価を目的とする。本研究では、従来のガス吸着による電気抵抗変化の測定法の代わりに、上記の(1)と(2)系のガス吸着による熱伝導率の変化を非接触的で迅速に測定することを提案した。平成19年度では、以下の研究を行った。 1) 光音響分光法(PAS)は、光励起後の無輻射遷移緩和による熱エネルギーを測定するため、半導体の光物性・熱物性を非破壊的に評価することに有効である。PASを利用してPSi/Siの2層構造試料における実効的な熱拡散率・熱伝導率を測定した。さらに、PSi側からの照射と基板のSi側からの照射を行い、2層構造モデルを考案し、PA信号強度と位相の変調周波数依存性からPSiのみの熱拡散率を算出した。PSiのみの熱拡散率はSiのものより3桁以上小さくなったことが分かった。さらに、PSi表面に吸着分子や粒子による熱物性変化を研究するために、CdSe量子ドットを吸着し、そのサイズの変化によるPSiの熱物性の変化について検討した。CdSe量子ドットの吸着によるPSiの熱拡散率が小さくなったことを見出した。 2)ナノ秒のYAGレーザーを購入し、簡易型高感度で表面が荒い試料でも測定できるヘテロダイン過渡回折格子装置を開発し、透過型の配置でナノ構造TiO_2試料信号が測定できるまで進んできた。現在安定性と感度を向上させよう装置系を改善し、また反射型配置でPSiのような不透明な試料でも測定できるよう検討している。
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