本研究では、(1)周期的なナノ構造を有するポーラスシリコン、(2)ナノ構造を有する酸化物半導体(TiO_2)ナノ粒子や逆オパールの薄膜を対象にして、そのナノ構造とmorphologyをコントロールし、ガスセンシング機能の特性評価を目的とする。本研究では、従来のガス吸着による電気抵抗変化の測定法の代わりに、上記の(1)と(2)系のガス吸着による熱伝導率の変化を非接触的で迅速に測定することを提案した。平成20年度では、以下の研究を行った。 1) 透過型光音響分光法(PAS)を利用してPSi/Siの2層構造試料における実効的な熱拡散率・熱伝導率を測定した。さらに、PSi表面に吸着分子や粒子による熱物性変化を研究するために、CdSe量子ドットを吸着し、そのサイズの変化によるPSiの熱物性の変化について検討した。CdSe量子ドットの平均粒径の増加に伴って熱拡散率が減少することを見出した。このことから、CdSe-PSi粒子間の界面抵抗により熱拡散が顕著に変化することを見出した。これらの結果より、PSiの熱伝導率の変化をモニターすることを利用して、ガスセンシングすることが可能であることが判明し、実際のガスセンシング応用に向かって大きく進歩した。 2) ナノ秒のYAGレーザーを用いた簡易型高感度で表面が荒い試料でも測定できるヘテロダイン過渡回折格子装置を開発した。異なるナノ構造TiO_2試料の熱拡散率の変化について検討を行った。ナノ構造TiO_2の多孔度や形態(ナノ粒子で作製した不規則性のものと規則性を持つ逆オパール)によって、その熱伝導率が顕著に変化することを見出した。さらに、ナノ構造TiO_2表面に金ナノ粒子やCdSe量子ドットの吸着による熱物性の変化が確認され、ガスセンサーへ適用できることが確認できた。今後、ガスセンシングへの応用に発展していく予定である。
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