研究課題
基盤研究(C)
金属ナノ粒子の光学特性がその形状に依存することから、形状制御は非常に重要である。最近の研究により、球形のナノ粒子に光を照射することによってプリズムへと形を変えることが可能であることが示され、新たな形状制御法として注目を集めているが、メカニズムなど詳細は不明である。一方我々は、水中レーザーアブレーション法によって作製した銀コロイドに光を照射することによって類似の現象が見出されることを見出した。本課題では、そのメカニズムを詳細に調べることを第一の目的とするとともに、これを調べるのにマイクロ反応系を導入し、より精度の高い解析を行うことを目指した。研究成果としては、18年度はハロゲンイオンによって形状転換が促進されることを見出すと共に、形状転換が起こる際に生じる銀イオンの存在を確かめた。また、照射波長について調べ、プリズムの生成が光還元によるものではないことを見出した。19年度は、ポリビニルピロリドン(PVP)溶液中でアブレーションによって作製した銀コロイドにレーザー光を照射することによっても、プリズムやロッドの生成が起こることを見出した。ハロゲンとPVPとの化学的性質の相違を考慮すると、PVP系でもこれが起こることは非常に興味深く、今後さらなる研究を展開する予定である。一方、系のマイクロサイズ化については、マイクロチャンネルへのコロイドの付着が問題となることを昨年報告し、今年度はチャンネルの形状についても検討を加えたが、芳しい効果は得られなかった。また、サブミリサイズのキャピラリーチューブについても検討を行ったが、同様にチューブへの付着が起こり、系としては適当とは言えなかった。これらの結果は、水中レーザーアブレーション法で作製した銀コロイドの溶液中での安定化が、表面に生じているわずかな電荷によってもたらされていることによるものである。
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