生体内で鉄を貯蔵するタンパク質であるフェリチンを、単分子層レベルで固定化した白金、フッ素ドープ酸化スズ電極(FTO電極)およびシリコン基板上を、大気下で400℃、1時間の熱処理を行い、フェリチンのタンパク質部分を酸化除去した。熱処理後の金基板およびシリコン基板上には、フェリチンコア由来の酸化鉄ナノ粒子(直径〜5nm)の存在が原子間力顕微鏡(AFM)測定より観察された。電気炉中の石英チャンバー内に、得られた酸化鉄ナノ粒子を触媒に用い、メタノールもしくはメタンを炭素源として600-900℃でカーボンナノチューブの作製を行った。基板上にカーボンナノチューブが生成されたことがラマン分光測定からわかった。また、フェリチン由来の触媒粒子サイズを0〜6nmの範囲で変えた場合には、そのサイズを直径サイズにほぼ有する垂直配向型カーボンナノチューブを作製できた。 カーボンナノチューブ合成白金およびFTO基板は導電性を有しており、電気化学測定に用いることが可能であった。FTO電極基板のカーボンナノチューブをUV-オゾン酸化処理をしたところ、金属錯体の種類によって電極反応に違いが見られたことから、カーボンナノチューブの酸化処理によってカーボンナノチューブ合成基板電極の特性を制御可能であることがわかった。さらに、白金基板上のカーボンナノチューブにグルコースオキシダーゼを浸漬法によって吸着固定化したところ、カーボンナノチューブとグルコースオキシダーゼとの直接的な電子移動反応が観測され、グルコースオキシダーゼによるグルコースの酸化が熱力学的な理論酸化電位付近で起こることがわかった。これは、酵素センサ作製のための酵素固定化電極基板として、この種の電極が極めて優れていることを示す。
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