本研究提案では(1)「ZnOナノ粒子形成過程の解明」、(2)「ZnOナノ粒子の高密度励起効果」、(3)「ZnOナノ粒子の粒径制御の試み」の3つの項目を掲げている。18年度は(1)を中心に実施し、(2)の実験の準備を進めた。 (1)「ZnOナノ粒子形成過程の解明」では、SiO_2試料に対してZn^+イオン注入をイオンエネルギー60keV、イオン注入量1.0×10^<17>ions/cm^2で行い、試料内に金属Znナノ粒子を形成させた。その後に酸素ガス中で熱処理を行い、Znナノ粒子からZnOナノ粒子への変遷を、可視紫外光吸収分光、低角度入射X線回折で追跡した。その結果、600℃1時間の熱処理で一部のZnナノ粒子がZnOナノ粒子に変化し始め、700℃1時間で大半のZnナノ粒子がZnOナノ粒子に変化することが明らかになった。 しかし900℃1時間の熱処理を行うと、ZnOナノ粒子が基板のSiO_2と反応を起こし、Zn_2SiO_4相に変化してしまうことも判明した。さらにRBS測定を行ったところ、Znナノ粒子はSiO_2基板内部に形成されるのに対して、ZnOナノ粒子はSiO_2基板表面側に移動して形成されていると思われる挙動が見つかった。表面側への移動と反応をより詳しく調べるために、断面TEM観察、X線光電子分光、AFM観察などを実施し、Zn原子のSiO_2表面への移動と表面近傍でのZnOナノ粒子の形成過程を明らかにすることに成功した。 (2)「ZnOナノ粒子の高密度励起効果」に関しては、当初期待していた液体有機試料用の窒素レーザー励起蛍光時間分解測定装置で実際に測定を試みたところ、試料の実効体積があまりにも違いすぎるために検出感度が非常に不足していることが判明した。本装置での測定を諦め、現在、小型のYAGレーザーとICCD検出器を借用し、本予算で光学系の一部を購入し、実験の準備を着々と進めている。
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