既存の超高真空SEMに、2種類の金属有機ガスの導入ができるデュアルガスシステムを取り付けた。それぞれのガスに対して独立にリークバルブによって導入ガス圧を制御でき、単一もしくは混合ガスが1つのノズルから基板上に導入しながら電子線誘起蒸着(EBID)を行えるようにした。また、PC制御システムによって任意の形状のナノ構造のEBID創製が可能となった。 Feカルボニルガスのみを導入してEBIDを行った結果、磁性ナノ構造を作製でき、電子線ホログラフィー観察によって残留磁束密度としておよそ0.6〜0.8Tであることを確認した。また、2種類のガスとして、Feカルボニルガスとフェロセンを様々な混合比で導入してEBIDナノ構造創製を行い、その組成をエネルギー分散X線分光法によって調べたところ、ガス分圧比の調整によってFeの含有量を制御できることがわかった。また、それぞれのFe含有量のナノ構造に対して、残留磁束密度を電子線ホログラフィーで測定した結果、Fe組成が大きいほど磁性(残留磁束密度)が強くなることがわかった。混合ガスにFeカルボニルガスとPt含有有機ガスを用いた場合、FeとPtの両方を含むナノ構造が得られたが、EBIDだけでは、それらは非晶質構造である。L1_0型のFePt結晶相のナノ構造を得るためには、合金化に対する最適な混合比だけでなく、アニール温度がうまく制御されなければならない。また有機金属ガスを用いたEBIDナノ構造は、炭素を含むので、その除去も重要である。今年度、Pt比が多いナノ構造に対してはアニールによってFePt3結晶相が得られたが、今後は、炭素を含まないガスの使用や、最適アニール温度の検討を行っていく予定である。
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